甲状腺腫瘍備忘録

甲状腺腫瘍発覚から手術までの備忘録です

甲状腺腫瘍入院&手術 3日目(手術当日)

3日目

手術当日なので、引き続き絶食。
水分をこまめに摂るのが癖なので、思ったほどお腹は減りませんでした。飲んでいたのは冷たいほうじ茶。

(『術前絶飲食ガイドラインhttp://www.anesth.or.jp/guide/pdf/kangae2.pdf によれば、お茶やお水、果肉の入っていないジュースなどの清澄水の摂取は、麻酔導入2時間前まで安全だそうです)

朝から点滴が始まりました。この日は丸一日、点滴と共に過ごします。
ベースは水分と栄養補給。それに、手術時の吐き気止め、その次は手術時感染予防のための抗生物質が混ざっている時もあったと思います。
手首を曲げるとちょっと痛みのある位置で、はやく取れないかなあ、とずっと思っていました。それにしても点滴をしたのはとても久しぶりです。

午前中に身体を清拭して術衣に着替え、下着は紙パンツ一枚。足には着圧ソックスを履きます。着圧ソックスを履くのは、術中・術後の肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)を予防するためだそう。


当日、執刀医による手術予定の患者さんが他に2人いたので、私は最後でした。
なので、予定時間より45分ほど遅れて、手術室からの呼び出し。暇なので寝ていたところを起こされました。笑 リラックスしすぎにも程がありますね。

 

病室から、看護師さんに連れられ、歩いて手術室に向かいます。手術室ではキャップを被るので、髪は二つに括りました。ちょっと気恥ずかしい。
手術室についたらすぐフルネーム確認。前日、入れ替わり立ち替わり現れた看護師さんの中にいた、手術室の看護師さんと再会。
個人的な印象だけれど、手術室の看護師さんと病棟の看護師さんは雰囲気が違うような感じがしました。一概には言えませんが、手術室の看護師さんは、よりロジカルに任務遂行している感じ。病棟の看護師さんは、より感情に寄り添う感じ。役割分担からくるものかなと思います。

かけていた眼鏡を外し、キャップを被ります。眼鏡ケースにメガネを入れてもらう時、看護師さんに「あっ、眼鏡がすでに入ってます!」と驚きの声。
わたしは普段コンタクトを使っているのですが、夏場なので、サングラスがわりのメガネをもうひとつ、ケースの中に入れていたのです。
ダブルメガネ、なんとなく笑いを誘ってしまいました。別に手術前に場を温めなくてもよかったんだけど。笑

手術台で仰向けになると、ベッドごと手術室へ移動。
術衣をはずし、上から布をかけられます。手術室は相当冷やしているそうで、手術中は電気毛布であたためます、と入院のしおりに書いてあったのですが、その辺、わたしの記憶は定かではありません。
ひざ下にクッションをあて、血圧計、心電図のシールなどを装着。
麻酔科の先生とさらっと挨拶しながら、右手の人差し指に脈を測るクリップ、心電図用の装置も装着され、安全のためのベルトで固定されます。
「では麻酔を入れていきますね〜」と聞き、酸素マスクをあてられて、多分麻酔が点滴されはじめて数秒でオチました。


気がついたら、看護師さんが「終わりましたよ〜」です。どこで読んでもそんな感想でしたが、やっぱりそんなんでした。面白いように記憶が抜け落ちています。
いつもの私なら、なんとかしてこの体験を覚えておこうと観察するところですが、さすがにその余裕はありませんでした。人工呼吸器が入っていた覚えもありません。

手術室からベッドのまま、病棟階のナースステーションの側にあるお部屋へ移動して、一晩を過ごしました。ベッドで移動した時のことは微かにしか覚えていません。でももう目は覚めていました。きちんと麻酔が覚めてから移動するそうです。

麻酔から覚めたばかりのときはとにかく眠くて、目を開けては閉じ、話しかけられていることに答えるだけで必死でした。
術後、面会の許可が下りた家族が来ていたので、心配させてはいけないと「大丈夫」と言ったのだけれど、実際は眠いし声を出すのもしんどくて、もう全然説得力がなかったと思います。笑 その時の記憶で覚えているのは、思ったほど傷は痛くないけど喉が苦しいということ、眠い、熱がありそう、暑い、というところでしょうか。

手術室は冷やされているので、術後は大抵しっかりと布団を被せられるらしいのだけれど、私は術前から少し体温が高めだったせいか、とにかく暑いと感じました。布団をはいでもらい、かわりにバスタオルをかけてもらいました。ひんやりして気持ちよかったことを覚えています。

術後3時間までは心電図をとるための装置や脈をとるためのクリップ、点滴、尿管、首からのドレーン、首元を抑える氷枕が首の上にのっていたと思います。
「寝返りを打ちたければいつでも看護師を呼んで下さい」と言ってもらったのだけど、何をどうしたら楽になるのかわからなかったので、ただただ耐えていました。 
吐き気はなかったので、麻酔科の先生との打ち合わせの時、あらかじめ点滴に吐き気止めを入れておいてもらってよかったと思います。この時に吐き気があったら、きっともっと辛かったでしょう。


けれど、しんどいしんどいと思っていても、時間を追うごとに体は回復しました。
3時間経つと、眠気が覚め、暑い暑いと思っていた熱が少しひいていて吸い飲みでお茶を飲ませてもらいました。あとは自分で左右に寝返りを打てるようになります。動くのはまだしんどいのですが、上だけ向いていると一部にだけ負担がかかる感じがして、なんとか寝返りを打っていました。

全身麻酔で、人工呼吸器を入れた後なので、とても痰が絡みやすく、寝ていると息苦しかったです。一人なら咳き込むこともできるけれど、部屋には同じく術後の人たちが寝ているので、咳き込んで起こすのは申し訳なく、我慢するのがとても辛いと感じました。

術後6時間経過した深夜12時頃、ようやく術衣をとって、用意していた下着とパジャマを着せてもらい、カテーテルをはずしてもらいました。この時から自力でトイレに行ったりできるようになります。
とはいえまだ痛みもあるしフラフラではあるのだけど、痰が絡んだらトイレ移動できるし、自分でお茶も飲めるし、ここまでがとても辛かっただけに、とても楽になったと感じ、連続2時間くらいは眠れるようになりました。
右または左に寝相を固定して眠って目が覚めたら、枕が当たる耳の後ろから首にかけて、じわーっとしたしびれと痛みがありました。寝返りをうつとまた治っていくので、術後ということもあり、一時的な血行不良のようなものだったのかなと思います。

私のベッドは、カーテンをあければ壁に掛かった時計が見える位置にあり、今何時か、朝まであと何時間か、何度も確認していました。朝が来るのがとても待ち遠しかったです。泣くほど辛かったというほどでもないけれど、精神力を試された一晩でした。

結局、点滴が終わったという連絡以外は一度もナースコールを鳴らすことはなかったのだけど(お願い事は、定期的な検温時などにしていた)看護師さんには何度も「辛かったらすぐに呼んで下さいね」と言っていただき、あれこれと世話を焼いてもらって、仕事とはいえ本当に感謝しかありません。

こういう体験を若い頃にしていたら、医者や看護師にきっと憧れただろうなあ、なんて思ったりもしたのでした。