甲状腺腫瘍備忘録

甲状腺腫瘍発覚から手術までの備忘録です

ただ何度も繰り返し聴いている

 

私はスピッツがすきだ。

その昔(だいぶ昔)はファンクラブにも入っていて、少し頭おかしめのファンだったが、今は新曲が出たら聴く程度の、のんびりしたファンとなった。

私の場合、人生の前半部分で割と音楽と深く関わる生活をしていたので、ティーンエイジャーの頃は単純に音楽を聴くことも演奏することも好きだった。若い時というのは音楽を楽しむ時間もたくさんあり、また感性が豊かだったのだろう。中年となった現在では、音楽との関わり方が全く変わってしまった。などというちょっとした感傷もありつつ。

 

スピッツは、先日シングルコレクションを発表した。名前の通り、これまでのシングルコレクションなので殆どは知っている曲なのだが、最後の方にいくつか新しい曲が入っていた。

そのうちのひとつが「1987→」だ。

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当時のスピッツを聴いたことのない人も、この時代のバンドサウンドを知る人なら「懐かしさ」を感じる人も多いのではないだろうか。私たちスピッツを愛した者にとっては、今も響き続けているその音と、変わらない、でも今のスピッツであるからこその音であり、歌詞だった。

多くのブログで言及されているが、この曲は、インディーズ時代の曲がリメイクされている。イントロ聴いたところで震えがきた。スピッツを聴くにあたっては、久しくなかった感覚だった。最近のスピッツにエモさを感じないというわけでもない。昨年出た「みなと」を聴いた時は、ブログなどやっていなかったので直接会える人やSNSで友人に言いふらしたほど、心動かされた。

しかし「1987→」は「満を持して」という言葉がぴったりである。気負ってできたものではなく、楽しんで作られた曲に魂がこもっている。そこにいるのは、言えなかった言葉に後悔を叫び、泥沼に落ちて吠えていたスピッツではない。でも、結成から30年、その歴史と魂が確かにここにある。それらを今もこうして音楽として届ける力がある。過去を振り返って懐かしがるだけにならない確かな今が、聴く者の記憶を呼び起こし、それぞれの意味を持って大きなうねりとなる、いわば、装置ともいえる。

そりゃあ震えもするさ。

ちなみにこれはスピッツをあまり知らない方にも伝わるかわからないのだけど、MV映像もとても良い。

 

本来なら、私はこの感動を、私の心の中だけに留めておいたに違いない。けれど、今、私にはブログがあるので(正確には甲状腺腫瘍の記録のブログ)少しだけ認めておくことにした。音楽に限らず作品に触れるということは、個人的な作業でありつつも、多くの人とその体験を共有できるのがいい。

上手いとか下手とか、そういうカテゴリではとても語れなかったあの頃からずっと、ただひとつの輝きでもって私のハートを汚してきたスピッツが、確かにそこにいることにただ打ち震えて、この曲を何度も繰り返し聴いている。

 

このブログを目にした数少ないあなたが、スピッツの古くて新しい曲に興味をもってくれるといいなと思う。